打倒ローマは一日にして成らず

大航海時代Onlineでカルタゴ復興に燃える元将軍の記録。

映画 『聖の青春』 観てきた

昨日から公開された、映画 『聖の青春』

もともと10数年前に出た原作を何度も何度も読んでおり、
製作時から公開を楽しみにしていたので初日さっそく観てきました。


原作は『将棋世界』誌の元編集長で作家の大崎善生氏の同名著作から。
主人公は平成10年に29歳・現役A級棋士のまま亡くなった村山聖(むらやま さとし)九段。

村山聖九段はいわゆる「羽生世代」と呼ばれる、1969~1971年に生まれ20代のうちからタイトル獲得・順位戦A級昇進などトップ棋士として活躍した羽生・森内・佐藤康光・郷田・丸山・先崎・藤井などの世代に属する棋士たちの一角で、彼らの中で最も早く生まれ、また奨励会入会からプロ四段デビューまで羽生善治や谷川浩司などよりも短い2年11ヶ月という驚異的なスピードで(しかも子供の頃に発病した難病ネフローゼによる発熱・不戦敗を繰り返しながら)プロ入りした「怪童」「東の羽生・西の村山」などと称された存在。

実際、羽生・森内・佐藤ら羽生世代の中でも永世称号を獲得した3人との対戦成績は、VS 羽生善治6勝7敗、VS 森内俊之9勝5敗、VS 佐藤康光4勝6敗(イベント対局や病気による不戦敗などを除く)とほぼ互角かそれ以上の成績を残しています。

特に羽生善治との最後の対局となった平成10年のNHK杯決勝は、前年に膀胱がんにより腎臓と膀胱を摘出した手術を受けた年度での決勝進出で、その一局も殆ど勝っていた将棋だったところを逆転負けしたあと、その数カ月後にガンの再発で亡くなっており、七冠を達成した頃の驚異的な勝率を記録していた羽生善治と互角以上の対戦成績だったことからも、もし健在だったら・・と思わずに居られない伝説的な棋士でした。


さてそろそろ映画本編に関わる話を。
映画全体を通しての感想はと言うと、要所で確かに泣ける出来なのだけど違和感・ズレに最後まで戸惑った、そんな印象。

と言うのも、原作で村山聖少年が将棋のプロを志すその強烈な動機となったのは、当時史上最年少で名人となった谷川浩司であり、生涯でただ一回タイトルに挑戦した王将戦の相手も谷川浩司・現将棋連盟会長。
「打倒羽生」ではなく「打倒谷川」こそがプロ入り前・プロ入り後の村山にとってまず強大な壁となって立ちはだかった目標であり、羽生善治はその中で台頭してきた同年代のライバルで、映画でも村山が繰り返していた「名人になりたい」の倒すべき相手は谷川から羽生へと移っていった後半部分からの描写と思われます。
現在でこそ羽生善治は将棋界の記録を次々を更新し続ける大棋士ですが、村山がプロとなった1980年代後半~1990年代前半の将棋界は全盛期の谷川浩司が羽生善治ら次の世代の台頭に立ち向かっていた時代であり、それが映画で谷川については羽生からタイトルを奪われた棋士としての描写しかなかったのはちょっと惜しいなと思うわけです。

例えば谷川は羽生善治が史上初の七冠を達成したその前年(1995)も七冠阻止の最後の一冠保持者として立ち向かい、しかもそのタイトル戦の期間中に神戸の自宅で阪神大震災に遭い、被災した自宅を脱出して対局場に向かい、そののち羽生とのタイトル戦防衛に成功して大阪に帰還した棋士です。また震災の時には村山の弟弟子の一人が亡くなったこともあって村山を一番弟子としていた森信雄一門にとっては決して避けては通れない出来事であり、村山・羽生の二人は将棋界で率先して多額の寄付をしていたりもします。

この辺は原作を読んでいて映画化を渇望していた層からは違和感として、逆に前知識なしに本作を楽しみに見に来た層にとっては作品の根っこの部分の一本を充分に描かないで見せているためこれで村山の言動が理解できるのか、ちと心もとないかなと思った次第。それから村山は大阪の四畳半のアパートを引き払って東京に出たあと、膀胱ガンが発見されたことにより再び東京を離れ広島で入院することになりますが、大阪→東京→広島という居所の移動が観ていた人にちょっと分かりづらかったかもしれません。

原作通りに描かれていないと・・などと言うようなこだわりはそれ程ありませんが、一個の作品として観た時に、全体としてある程度の前知識に頼っている構成・演出の割に実際と変えている部分も結構あるので、分かっている人とそうでない人のどちらに向けて作品を見せようとしているのか、一回観ただけではちょっと分かりません。これはもう一度見に行けということなのかと思ったり。


その一方で一つ一つのシーンはとても良くできていた印象。特に対局時における羽生役の東出昌大と村山役の松山ケンイチは対局という動きの少ない、表現の手段が制約された場面の演技にもかかわらず、対局時の空気や秒読み時の表情・思考している仕草や緊張感はそれなりに迫力があり、大根と言われがちな東出これはちょっと再評価かといったところ。ひょっとしてこれは将棋連盟のほうで指していた棋譜の内容のかなりの所まで両役者に指導していたのかも知れませんね。
将棋界としてはとっておきの作品で相当に気合を入れて協力していて、クレジットには現役の棋士・女流棋士も名を連ねており、作中でその姿を見つけるのもちょっと楽しみの一つだったりします。



最後に小ネタ。

・東出が掛けていたメガネは羽生善治三冠が当時着用していた実物
・遺品のすり減って丸くなっていた将棋の駒は村山聖九段が使っていた実物
・冒頭に村山が道端で倒れていたアパートは実際に村山が住んでいた所か
・最後の対局での棋譜は1997年度のNHK杯決勝・羽生-村山戦がそのまま採用されている
・この時のTV解説者は先日亡くなった羽生善治の師匠・二上達也だった



おしまい。

テーマ:将棋 - ジャンル:ゲーム

  1. 2016/11/20(日) 20:13:13|
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