打倒ローマは一日にして成らず

大航海時代Onlineでカルタゴ復興に燃える元将軍の記録。

蒼き狼の末裔たち その24

アイン・ジャールートの戦い・後編

バイバルス率いる少数のマムルーク勢の誘導に引っ掛かって、逆に自分たちより遥かに大軍によって包囲されてしまったモンゴル軍の行方はその後どうなったでしょう。

ほとんど包囲が完成し、しかも包囲するほうが数倍の兵力を有しているのですから、
普通ならあっさり勝負が付くでしょう。それも包囲側はほとんど損害を出さずに。
しかしここでモンゴルの将キド・ブカは、相手の側面の一部で包囲が完成していないわずかな地点がある事に気付き、そこに手持ちの騎兵を集中投入します。つまり逆に『一点突破→背面展開』を仕掛けて、『相手の側面への側面攻撃』を掛ける事に成功したのでした。こうやって文章で書くのは簡単ですが、これを実際にやってのけるだけの底力はただ事ではありません。
これで部分的には乱戦に持ち込んだモンゴル軍はじりじりとマムルーク勢の包囲陣を削ってゆき、一進一退を続けるうちになんと開戦から数時間後には逆にやや有利とも見える戦況にまで引き戻したのでした。あんまりこういう戦い振りって聞いた事ありません。

ですが相手にしていたスルタン・クトゥズも長年の抗争を生き抜いた勇将でした。
思わぬ乱戦に自軍の一部が潰走しかかる程にまで浮き足立つ味方に対し、
兜を投げ捨てて、軍をまとめ、戦闘を再開させてこう叫びます。

『諸君はその生命を守る為に戦っているのではない、
      イスラムの将来を賭けて戦っているのだ』

と自ら前線に立って叱咤激励し、
この呼び掛けに奮い立ったマムルークたちは包囲陣を建て直します。
この長時間の乱戦のなか、なんとかアイン・ジャールートの渓谷へと部下を逃がそうと奮戦していたキド・ブカが遂に戦死します。(これ、乱戦の中での戦死という記述と、捕まってクトゥズとやり取りを交わした末に処刑されたとの記述もあります)

アイン・ジャールートの戦い03
(中盤~最終局面の様子)

数で劣り、なおかつ包囲され、総司令官が戦死した状況ではどう考えても限界があったでしょう。残ったモンゴルの指揮官たちは戦闘の継続を断念して撤退を始めます。追撃を受けつつアイン・ジャールートから12km先のベイサンへと逃げ込んだ残るモンゴル軍ですが、ここにもマムルーク騎兵が待ち伏せしていました。もはや完全に戦意を喪失したモンゴル軍はこの戦闘で遂に壊滅します。最終的にシリア北部のモンゴル領内に戻れたのはほんの数十人にも満たない程の完敗を喫したのでした。

その後、モンゴル側の主だった将が壊滅した混乱状況と戦勝の余勢を駆ったマムルーク勢は、ダマスクス・アレッポといった拠点を奪回します。地中海沿岸に残る十字軍系の領主を除き、1260年中にはほぼシリア北部のユーフラテス川付近までを一気に制圧します。

それにしてもこれ以前にモンゴル軍を会戦で破ったのは、前も紹介したホラズムの息子ジャラールによるアフガン戦役の例や、わずか400騎で8000のモンゴル軍を蹴散らした金国末期の完顔陳和尚などの例があるにはありますが、その後に決定的な反撃を受けずに決着が付いた例としてはこのアイン・ジャールートの戦いが実に初めてだったのでした。

アイン・ジャールートは規模としては局地戦ではあるものの、
結果としては恐らく世界史上でも最も重要な戦いの一つとなります。
仮にこの時点でイスラム系の政治勢力がすべてモンゴルの支配下に降っていたらその後の世界史は全く違ったものとなったでしょう。更に13世紀前半のユーラシア全土を吹き荒れたモンゴル不敗神話の崩壊。モンゴルといえども他の国の軍隊と同じく有利不利・運不運によっては敗れる事もあることを証明し、時間は掛かりますがヨーロッパにまでその報告は届いています。
そして何より世界制覇に向けて西へ西へと遠征を続けていたその活動自体も、
これを分水嶺として終焉を迎える事になったのでした。
もちろんモンゴル側としてはまだまだ局地戦で1~2万の兵を失ったに過ぎませんから、量的な損失では恐らくほとんど影響は無かったでしょう。しかしもはやその後のモンゴルは単純に外部との戦いに専念する事は出来なくなっていました。


次回はアイン・ジャールートの戦い以後の情勢を追ってみます。
そろそろ終わりが見えてきたかも。(やー、やっとここまで来た感じだナ。)


おしまい。

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  1. 2008/01/31(木) 07:38:31|
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