打倒ローマは一日にして成らず

大航海時代Onlineでカルタゴ復興に燃える元将軍の記録。

草原の興亡 その21

大宛の天馬 その2


李広利が軍を率いて大宛を目指す紀元前104年以前、
張騫の献言を容れた武帝は張騫亡き後も度々西域へ使者を派遣していました。
史記・大宛伝に記されたその行き先は、
安息(パルティア)、身毒(インド)、奄蔡(現カザフスタン西部)など10カ国近く。

さらっと書いてますが、
既に紀元前2世紀の時点で漢とパルティア王国との間に使者の往来があったと言うのもちょっと驚きですね。
ちなみに紀元前104年頃のパルティア王と言えば傑物ミトリダテス2世の時代。
国内を固めた後に隣国アルメニアを属国化させて勢力を大きく拡大させた一方、
地中海の覇権を確立させつつあったローマとも国交を開き、
更にイラン北部にたびたび侵入していた騎馬遊牧民とも友好関係を築くなど、
後にパルティアが強勢となる礎を成す人物でした。

またこの頃の地中海では、
グラックス兄弟の改革が頓挫してマリウスやスッラなどが台頭しつつある時期で、
このマリウスの甥がユリウス・カエサルでした。
こうして見るとこの頃のユーラシア大陸は、
ローマ・パルティア・前漢といった地域の大きな軸が確立してゆく流れにあったのが分かります。
また匈奴や北アフリカ、ガリア、イラン北部など、
周辺の騎馬民族がこの時期揃ってこれら大国と紛争を起こしていたのも共通していますね。

そしてこの中で挟まれる格好となったのが、
ローマとパルティアの中間にあったアルメニアであり、
パルティアと漢の中間にあった大宛やソグディアナの諸国家だったのでした。

事実、大宛へ遠征軍が派遣される前の紀元前108年には、
手前にある楼蘭と車師国が漢の使節を襲ったと言う口実で攻撃を受けており、
漢と匈奴の争いはその周辺国にも大きな影響を及ぼしていたのでした。


中央アジア図BC02-3

そして
紀元前104年、たびたび良馬を送るよう大宛に要請していた漢は、
この年遂にしびれを切らしたように出兵を決断します。
およそ3万の遠征軍を指揮するのは李広利将軍。
その目的は大宛が最も良質な馬を隠しているとされた弐師城を攻略する為でした。

しかし河西回廊の一番西に位置する敦煌からでも大宛はおよそ2000km近くあり、
その間にはタクラマカン砂漠とパミール高原が立ちはだかるシルクロードの難所。
まともな道案内と補給路が整備されていなければこれ程の大遠征はどう考えても無理・・・。

案の定と言うか、
李広利の軍は結局この第一次遠征では途中で兵糧が尽きたり多くの兵が倒れたりで、
大宛にまで至る事ができずに消耗してしまい、たまらず敦煌まで撤収したのでした。

しかもこの李広利将軍、若いときは遊興の徒であったのが妹の李夫人が武帝の寵姫となった為に取り立てられたような経歴の人物で、この時に率いていたのも悪童・無頼の輩が多く含まれていたというのですから、これでは元々からして成功は疑わしいですねw
しかし武帝は容赦ありません。
敦煌まで逃げ帰ったという報告を聞いて激怒します。
『玉門関を越えて戻ったら斬る!』
玉門関は敦煌の近郊にある防衛要塞で、李広利は仕方なく付近に留まって増援を待ったのでした。


その後、武帝は本国から増援の歩兵・騎兵・補給隊を送ると共に、
西域諸都市の都尉(守備隊長)に遠征軍への一部参加を命じて李広利をサポートさせます。
更に大宛に至る近隣諸都市・小国家に通達して遠征軍への支援を半ば強要する形で取り付けます。
ここまでお膳立てしてもらった李広利将軍、
今度は本隊だけで6万を数える大遠征軍を率いて大宛を攻撃します。
この時の遠征、
同じく良馬の産地だった康居国だけは大宛を支援する動きを見せますが、
結局李広利の動きを止めるには至らず、大宛城は弓射と水攻めによって包囲されます。
そしておよそ40日もの攻城戦の末、
大宛は外城を破壊されて守備兵と将は中城まで退却します。
その後、大宛の内部で争いがあり、
守備隊長を勤めていた将軍は争いの原因となっていた大宛王を殺して開城したのでした。
この時李広利は北の康居国の動向も不穏だったので大宛の内部まで攻めることをせず、
交渉によって何とか大宛から数十頭の良馬と三千頭の中級の馬を得て帰還したのでした。
こうしたパミール以西への軍事活動によって、漢の影響力はある程度西域へ及ぶ事になります。
しかし、元々紀元前170年代の第二次月氏攻撃以降は西域諸国を半ば属国としていた匈奴、
これを黙って見過ごすはずもありませんでした。
紀元前99年、再度西域へ派遣された李広利に対して、匈奴は遂に反撃を始めます。
それは西域へ戦線が移って以降初めての大規模なものとなったのでした。




おしまい。

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テーマ:大航海時代Online - ジャンル:オンラインゲーム

  1. 2008/08/27(水) 07:38:35|
  2. 草原の興亡
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

小説で語られるこの辺。

 お久しぶりです、マリィナです。いろいろな小説で語られていると思いますが…

 大宛(フェルガナ)辺りを大旅行した張騫のその20のお話は『異色中国短篇傑作大全』(講談社)の宮城谷昌光『汗血馬を見た男』。

 霍去病、李広利、李陵ら大宛遠征軍の将軍となった人々の中でも特に李陵にスポットを当てた名作が中島敦『李陵』(新潮文庫)。

 楼蘭、車師国などの国(あくまでモデルですが)を旅してインドまで教典を求めるお話が『西遊記』(岩波文庫)。

 ユリウス・カエサルは塩野七生『ローマ人の物語』(新潮社)ですが、私は未読です。

 そしてフェルガナを舞台にしたRPGが『Wanderers From Ys』(弱いオチ)。

 こんな感じですねー。もっと色々ありそうですが、読みやすいのでおすすめかもです。
  1. 2008/08/27(水) 19:21:13 |
  2. URL |
  3. マリィナ=ファリエル #hn7S5JsQ
  4. [ 編集]

マリィナさん>>
いろいろ推薦ありがっと。
『李陵』はいっぺん読んで見たいと思ってます。
カエサルものだと、『ローマ人の~』は内容量すごいけどやや(かなりか?)カエサル贔屓なとこがあるので、バランス取るならヴェルキンゲトリクス視点を織り交ぜつつ描かれた『カエサルを撃て』とか面白かったので一緒に読むといいかと思いますよ。
  1. 2008/08/28(木) 15:40:42 |
  2. URL |
  3. ハミルカル #-
  4. [ 編集]

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