打倒ローマは一日にして成らず

大航海時代Onlineでカルタゴ復興に燃える元将軍の記録。

エル・シド その2

三人のエル・シド


今回から小シリーズを組んで見てゆくレコンキスタ時代最大の英雄エル・シド。
CP5で登場して来たレコンキスタの連作クエストにダイレクトに関連するものを書くという、ウチにしては珍しく正統派の大航海ブログっぽい事してる感じですが、果たして叙事詩にまでなった彼の実像はどんな人物だったのでしょう。


(はじめに)
彼の半生を振り返る前に、
取りあえず今回の副題とした表現について。
彼に関する資料を当たってゆくと、
どうしても1人の人物としては捉え切れないことに気付かされます。
大きく分けてそれは3つの面から。

1)史実のエル・シド
2)叙事詩に活きる英雄エル・シド
3)作られたエル・シド像

1)と2)はまあそのままの意味です。
問題は3)。
エル・シドは、現代史のスペインにとっても歴史上の象徴的な人物でした。

20世紀のスペインは、王制からスペイン革命による共和制への移行、第二次世界大戦の前哨戦となったスペイン内戦からフランコ軍事独裁政権、そして国王ファン・カルロスにより1970年代になってようやく民主化への道を歩み始めた、まだ『戦後』が終わって30数年しか経っていない微妙すぎる歴史を抱えています。しかも未だに北部のバスク地方や東部のカタルーニャ地方では独立運動の火種をくすぶらせているなど、不安要素を抱えたまま21世紀を迎えている国でもあります。

そんな中では、かつての国土回復運動の英雄として叙事詩にまでなった人物は、体制側の政治指導者たちからしたら絶好の偶像として利用できる存在になっていただろうというのは想像に難くありません。しかもエル・シドはスペイン内戦時にフランコ将軍の反乱軍が初期の拠点としていたガリシア・レオンなどスペイン北部が生んだ最大の英雄でした。反乱軍として解放を掲げるときに地元の英雄エル・シドの名を利用するのはまあ常套手段でしょう。

そしてその反乱軍は最終的にスペイン内戦を勝利し、軍事独裁政権を打ち立てる段になると、 『祖国を解放した』 英雄としてのエル・シドは、解放者としてのその一部分だけがクローズアップされてしまう・・・、これが、20世紀のエル・シド像に大きな影響を与えたんじゃないかと思います。


これから見て行く実際のエル・シドは、単純にカトリック教徒を守護する英雄的騎士ではなく、時にはイスラム勢にも味方しその逆の立場として戦っていた、どちらかというと傭兵的な行動をして来ている人物です。例えば1081年にカスティーリャを追放された後、知人でもあるサラゴサのターイファに仕えて5年に渡って加勢した話なども間違いなく彼の人生の一幕であり、そこにはカトリック/イスラムの別なく乱世を生き抜き、イスラム教徒からも尊敬を込めてアル・アンダルスの『司令官/頭領=エル・シド』 と呼ばれた姿が浮かび上がってきます。
ですが現在のエル・シドの人物像では、恐らくイスラム勢にも加勢してカトリック教徒とも戦っている経歴は、隠蔽まで行かなくとも意図的に伏せられている位の操作は行われていて不思議じゃありません。特に対テロでいち早くブッシュ政権に協力した最近のスペインでは再びその種の偏った人物像が作られ、象徴となっている気がしないでもありません。

しかし、今回書いている私はカトリックでもイスラムでもない、まったく干渉を受けないニュートラルな立場ですから、あくまで歴史上の人物としてのエル・シドに迫ってゆくのが自然かなと思います。そう考えると、今回の連作クエスト中で『あなたなりのエル・シドを見つけて下さい』というようなクエスト進行のテキストはかなり秀逸なんじゃないかと思えてきたりしますね。



(呼び方)
さて重めの話はこの辺にして、本編へ。
この英雄エル・シド、他にもエル・シッド、エル・シードといくつか読み方がありますが、ここでは最初に使ったエル・シドで通します。呼称の元となったアル・アンダルスで英雄や貴人を意味する語『サイイド』、更に『アッサイイド』という語感からはエル・シィドが結構近いかもですが。
彼が本格的に活躍する前に、彼が生きた時代を振り返ってみます。
いっぺん書いた話なので要約で。


(カスティーリャの台頭)
エル・シドが誕生する直前、11世紀初頭のイベリア半島北部は西からレオン王国、カスティーリャ伯領、ナバラ王国に大きく三分されており、これがナバラ王サンチョ3世時代に3地域が婚姻政策により政治的に統合されて大きく力を持ち始めていました。
そして、サンチョ3世の遺言によってこの地域が再び分割相続されたあと、本家であるナバラ王国以外のレオンとカスティーリャは子のフェルナンド1世によって統合され、カスティーリャ=レオン王国が新たにイベリア半島北部では最大の勢力として生まれていました。

一方イベリア半島の南部はと言うと、長年この地域アル・アンダルスを支配していた後ウマイヤ朝が1000年代に倒れ、主要都市毎にターイファと呼ばれる諸王が分立する動乱の時代を迎えていました。イスラム諸王朝と考えればまだまだイベリア半島の主役はイスラム勢なのですが、これにより単体の政権としてはカスティーリャ=レオン王国がイベリア半島では最大の勢力となっていたのですね。

とにかくエル・シドが生まれてくる1040年代は、こんな感じでほとんど戦国時代初期や後漢末のような混沌とした情勢にあった事は背景として認識しておいていいかと思います。
後の事になりますがエル・シドが幾度も故郷を追放された後、放浪した末に旧バレンシア王国に流れ着き、支持者と共に旗揚げして切り取り次第に自分の領国を作っちゃうなんてのは、乱世じゃないとまずありえませんから。三国志シリーズやった事ある人なら、シナリオ2で放浪君主が呉か会稽あたりで独立したイメージ持ってくれたら分かりやすいかと。(こんな例えでもたぶん1/3くらいはついてくるのがここの読者くおりてぃ)



いつの間にかもう2000字くらいになってるようなので続きは次回へ。
まだ本人が登場してないけどw
一応前シリーズで作った地図を2枚ほど上げておきます。
(この後の進行で書き足したものを上げる予定です。)


スペイン地図AD11世紀
10世紀末のイベリア半島

スペイン地図1090
11世紀末のイベリア半島



おしまい。

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  1. 2009/03/03(火) 18:18:32|
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