打倒ローマは一日にして成らず

大航海時代Onlineでカルタゴ復興に燃える元将軍の記録。

造船素材紀行 その2

船材の女王


海・川・湖沼、
水面のあるところ、
人はそこにいつしか船を浮かべ、
やがて大洋に乗り出し、
遂には世界を航路で繋げ、
あらゆる未知の海域を走破する成果を成し遂げてきました。

しかし寒冷地もあれば熱帯地もある気候の差が激しい地球のこと、
そこに住む人々は、
それぞれその土地の素材・さまざまな条件に適応した異なる船を生み、
生活に密着した所から大洋へと乗り出してきたのです。
それはもう、環境・特に素材から生まれ育った技術史。


第二回目の造船素材は、
ヨーロッパの木造帆船、特に戦闘艦では定番とも言えるあの木材から。


【堅牢なるオーク材】
オーク(Oak)
ヨーロッパ・北米・アジアの温帯を中心に棲息するブナ科の広葉樹です。
さてこのオーク材、同系の木材は世界中に色々ありますが、
困った事にその土地によって名称も木材の性質も結構違います。

例えば日本で一般にオークというと=樫の木(常緑樹)と訳すと思いますが、
ジャパニーズ・オークと称されるのは、実は樫の木ではありません。
Japanese oak=水楢(ミズナラ=落葉樹)の木。

明治期の文豪が区別しないで訳し間違えたって話、聞いた覚えがないでしょうか?
だから競馬でオークスと称される3歳牝馬のあのレース、
1779年にダービー伯爵の別荘の庭に生えていたオークの木にちなんで名付けられたのですが、
北ヨーロッパでオークと言ったらほぼ落葉樹の方なのでどちらかと言うと水楢に近い。
となるとそのレースの勝馬を日本で 『樫の女王』 と訳すとなんか違うって話に・・・。

そんな間違いが起こるほど良く似た素材のカシ材とナラ材、
同じブナ科コナラ属ですが日本の樫の木はその中でも特に比重が高く硬いんですね。
それもあってか日本では水楢より樫のほうが評価が上で、
船材としては恐らくヨーロッパのオーク材より上でしょう。
そう考えたら樫の船材でガレオンや戦列艦作ったらすごい堅牢なのができるかも。

さてこの水楢の仲間となる北ヨーロッパにおけるオーク材。
素材として『重く・硬く・切削加工しづらい』ところはあるものの、曲げには優れていて曲げた後の追従性や衝撃に対する柔軟性や抵抗性を持ち、樹木の中でも特に耐久性・耐衝撃性・耐水性に優れている性質から、船材としてはそれこそヴァイキングが北海を制していた頃には既に使用されていました。

他にもポルトガルが1440年頃に独自開発していたカラヴェル船の名称が、ポルトガル語でオーク材を表す 『Carvalho』 に由来しているかも、なんて話があるくらいですから、普通に中近世のヨーロッパでオーク材(特にホワイト・オーク)は身近な船材だったのですね。
ただまあ、それだけ優秀な素材ですから人気は高く、大航海時代の割と早い段階から不足気味になっていたのか、この時期には他にも赤松(レッドパイン材)やニレの木(エルム材)・杉の仲間(シダー材)などもその用途に応じてかなり用いられています。


(大量消費の時代)
そしてこのオーク材、
17世紀以降に大型化・重武装化していったガレオンや戦列艦の時代となり、
更に大量使用が始まります。

一例を上げてみましょう。
現存する戦列艦である、ネルソン提督の旗艦・ヴィクトリー号。
大砲120門を積んだと謂われるこの一等戦列艦を建造するのに切り出されたオーク材の数は、
なんと6000本以上。

これをブリテン島から調達したとされますが、小さな森が1個消えても不思議じゃない使用量ですね。
また18世紀後半~19世紀前半の100年間だけでもイギリス海軍は戦列艦をだいたい延べ250隻ほど建造していますし、他にもフリゲート以下の艦艇がその数倍ある訳ですから、相当な量の木材が使用されていたでしょう。(参考図書・『図説イングランド海軍の歴史』より抜粋)

しかもこの時代、イギリスでは製鉄業が飛躍的な成長を始めていました。
そして17~18世紀当時の製鉄で使用する主燃料はというと、これがまだ木炭。
当然その原料となる木材は相次いで伐採されており、
18世紀前半ともなるとブリテン島の森林資源が激減していたのは想像に難くないですよね。
その後、18世紀の中期には石炭を使用した製鉄技術が進んできたものの、
もうその頃にはイギリス国内の森林資源は枯渇に近い状態だったと言います。

実際、戦争続きで新造艦が多数進水していた18世紀以降のイギリス海軍では、既に本国の木材だけでは足りずに北欧や東欧のオーク材も大量に輸入しています。更にはやや高価ですが軽量で耐久性・強度にも優れていたインド洋のチーク材も相当に輸入しており、半面環境破壊に近い現象が起こっていました。
この点、強度や耐久性には劣るけど加工しやすくて安価な針葉樹林を保有していたアメリカが、
19世紀になっても比較的短期間に大型の木造帆船を建造する事ができたのとは対照的でした。

その後、イギリスでは鉄材が帆船にも導入されるようになりますが、
これ単に産業革命で飛躍的に安価な粗鋼の生産が可能になっただけとは言えないかも知れません。
炭素を取り込んだ強度に優れた鉄が作られ、船材として優秀なことが次第に分かってくると、
造船大国イギリスではアメリカの安価で短工期で作れる木造帆船に対抗する意味もあってか、
その後の鉄材導入はかなり急ピッチで進められてゆきます。
ただ、もうこの頃には外輪やスクリューを補助動力とした蒸気船の時代がやって来ており、
木造帆船の時代は終わりを告げようとしていました。
そしてイギリスやフランスで装甲艦が作られ始める19世紀の中盤以降、オーク材の木造艦では太刀打ちできない船体強度と耐衝撃性を持った装甲艦の実力はクリミア戦争などで遺憾なく発揮されてゆきますが、これはもう別のお話ですね。


おしまい。

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  1. 2009/12/10(木) 23:34:03|
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